町の古本屋っていうとこう、猫の額ほどの店内に、売る気があるのかないのかわかんないような古本が、けもの道みたいな通路の両脇に、腰の高さぐらいまでみっちりと積み重ねられ、店の奥にはメガネを鼻でかけてるような爺ちゃんが寺の秘仏みたいに鎮座ましまして店番してる。 そんなイメージがある。 しかし、茨城県土浦市の「つちうら古書倶楽部」は違う。古書店なのにデカイくて広いのだ。
とある漫画の単行本が一冊。その表紙カバーの中央に、ダダダダダダダダッと針で突いたような無数の穴。カバーをめくると、針は中の頁にまで突き通っていて、紙は破れ、ところどころちぎれている。 何かの怨みを晴らしたのか、あるいは呪いを込めているのか、とにかく薄気味がわるい。おまけにその漫画というのが、よりによって怪奇漫画の巨匠、日野日出志の『まだらの卵』だったりするのだから、始末に負えない。 いきなり極端な例が出てきてびっくりさせられるが、この本は古書店の棚などに並ぶ古本から、「書き込み」や「貼り込み」や「切り抜き」、あるいは「針の穴」のような、前の持ち主の“痕跡”が残っている本──すなわち痕跡本を集めて、それらの痕跡から元の持ち主の行動や、その痕跡の意味を解読してみせる図鑑だ。 わたしも古書マニアなので、書き込みがされた本を見かける機会は多い。なかには、弁当の箸袋がしおり代わりに挟まれていたり、表
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