ようやく時間ができたので、レベッカ・L・ウォルコウィッツ著『生まれつき翻訳』(監訳・佐藤元状、吉田恭子/訳・田尻芳樹、秦邦生、松籟社, 2021)を読みはじめる。監訳者の方々は「クッツェーファンクラブ」の面々なので、読むのを楽しみにしていたのだ。 まずは序章「世界文学の今をめぐって」をざっくり読んでいくと、クッツェーという作家名がかなり出てくる。そこはゆっくり読む。するとチカチカと点滅する文字群に出くわした。p24の3つ目の段落はこう始まる 「ニューヨークやロンドンなど出版業界の中心から外れた場所にいる英語作家も、翻訳を余儀なくされることがある。ケニアの作家グギ・ワ・ジオンゴが最初の一連の長編をキクユ語で出版することにしたのはよく知られているが、自らの翻訳で英語でも出版してきた。チヌア・アチェベの『崩れゆく絆』にはイボの言葉がそこここに使われているが、一九六二年、ロンドンのハイネマンの叢書