言語学, 差別 『ヴァーチャル日本語役割語の謎』(金水敏著、2003年、岩波書店)という社会言語学の本がある。 この本で筆者は、近代日本の小説や漫画、ゲームなどの創作媒体において、共通日本語(大日本帝国では文章での公用語は漢文訓読体の古典日本語であったが、口語では東京方言を基盤とした共通日本語が公用語であった。日本国では、無論文語口語共に、首都圏方言を基盤とする共通日本語が、公用語である)から離れた言葉が、ある特定のステレオタイプをもった階層、民族、職種に属する登場人物の発話に使われ、その人物の性格や物語上の役割を、ステレオタイプを利用して簡潔に印象付けるという現象、『役割語』について紹介すると共に、そのような『役割語』を割り振られた人物は、創作媒体を利用する者が自己同一化を行う主人公(ヒーロー、ヒロイン)にはなりにくいような仕組みが存在していると述べている*1。そしてそれは、近代国民国家