僕らの社会においてセックスは、金銭とはまったく別の、もうひとつの差異化システムなのだ。 そして金銭に劣らず、冷酷な差異化システムとして機能する。 そもそも金銭のシステムとセックスのシステム、それぞれの効果はきわめて厳密に相対応する。 経済自由主義にブレーキがかからないのと同様に、そしていくつかの類似した原因により、セックスの自由化は「絶対的貧困化」という現象を生む。 何割かの人間は毎日セックスする。何割かの人間は人生で五、六度セックスする。そして一度もセックスしない人間がいる。 何割かの人間は何十人もの女性とセックスする。何割かの人間は誰ともセックスしない。 これがいわゆる「市場の法則」である。 解雇が禁止された経済システムにおいてなら、みんながまあなんとか自分の居場所を見つけられる。 不貞が禁止されたセックスシステムにおいてなら、みんながまあなんとかベッドでのパートナーを見つけられる。
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