あっという間の出来事だった、40代のスーツを着た中年男性が、立派なビジネスビルの「締切」と書いてある自動ドアに小走りでぶつかったのである。バーンという音がして、私を含め、ホールにいたあたりの人数人が注目すると、まるでグリコの一粒300mランナーとほぼ同様のモーションの彼が張り付いている姿を目にすることになる。 誰も声をかけない。誰も身動きしない。 ただ、男性は数瞬前、ガラスにぶつかったこと、そしてしばし張り付いていたことなどなかったかのように、開いた自動ドアから入り直し、悠然とエレベーターを待って上の階へと消えていった。 ※ 参考 http://www.glico.co.jp/kinenkan/goal/goal_gif/goal_02.gif ネットでもリアルでも、しばしば気まずい現場を目撃するのだが、笑うでなく驚くでなく、人はなぜ平然と行動しよう、冷静を保とうとするのだろう。まるで何も