感動読み物この男がいたからダルビッシュ、田中はメジャー入りできた 伊良部秀輝 哀しき最速エースの肖像 後編 父との対面と、突然の別れ 田崎健太ノンフィクション作家 周囲と衝突を繰り返しながらも、念願のメジャーの地を踏んだ。移籍先は史上最強とうたわれたヤンキース。「父を探す」という中学時代からの目標も3年目で達成。だがそれが最速王の絶頂だった。 果たされなかった約束 北緯60度に位置するアンカレッジは9月初旬でも、すでに冬の匂いがしていた。 スティーブ・トンプソンはぼくが泊まっているホテルまで来てくれることになった。ロビーで待っていると、冬服を着込んだ客がぽつりぽつり現れた。何人目だったろうか、足に鉛をつけたようにゆっくりと歩く、白髪の老人が入ってきた。目が合った瞬間、この人が伊良部秀輝の父親だと思った。かすかに伊良部の面影があったのだ。 トンプソンは1935年4月16日、シカゴで生まれてい
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