今週のコラムニスト:クォン・ヨンソク 〔9月19日号掲載〕 ソウル大学での講義を終えて、2カ月ぶりに東京に戻ってきた。「日韓の境界人」を自任してきた僕だが、今回は初めて日本に戻るのが怖かった。新大久保では反韓デモも起きたようだし、大学での授業もやりづらいことだろう、と。 ところが飛行機から眺めた日本の風景に、思わず胸が熱くなってしまった。秀麗な山並みときれいに整備されたつつましい田園風景に妙に感動したのだ。 韓国で国家主義的な報道に浴していると、日本在住25年の僕ですら、日本にはナショナリストを装った原理主義者や韓国への反発を利用するポピュリスト的政治屋が闊歩しているかのような幻覚に襲われてしまう。だがこんな美しい風景を見ると、そこで暮らす普通の人々の良識を信じずにはいられない。実際、僕の周囲の人たちも前と変わらぬ態度で接してくれた。やはり何事も直接行ってみて、触れてみることが大切だ。 と