「このなかに編み物をしてみたいという人はいますか?」 2009年後半のこと、リン・ズウェリングさん(67歳)が仮釈放を控えた囚人600人を前で言った言葉は、大変奇妙なものだった。当然ながら、囚人たちから「編み物をやってみたい」と名乗りでるものはなく、むしろ『ばあさん、何を言ってやがんだ?』と怪訝に感じたかもしれない。 ところが2年を月日を経た後には、リンばあさんのレッスンを欠かさず出席するものが続出。なかには、夕食さえも抜いて編み物に打ち込むものさえあらわれたのである。リンさんは彼らが編み物に打ち込んでいる姿を見て、「まるで聖者のようにさえ見えます」と話している。 これはたった一人のおばあさんが、編み物を通して刑務所に革命をもたらしたお話である。 18年間、自動車販売の仕事に携わったリンさんがリタイヤしたのは2005年のことだ。自らの情熱を傾ける先として思いついたのが、編み物教室だった。最