『私の浅草』(沢村貞子 1976初版 暮らしの手帖社) 主に大正時代の話である。関東大震災以前の実生活を垣間見ることが出来る、非常に貴重な書籍だと思っている。 澤村貞子 旧姓加藤 1908-1996(明治41〜) 浅草千束町生まれ。→2才のとき浅草馬車道→小学校に行くときに浅草猿若町(現浅草6丁目)に引っ越す。 おふくろの味 鰻 〈背中合わせの川魚屋でメゾッコという小さい鰻が格安の日は、バタバタと七輪でいい匂いをさせて、鰻どんぶりの大ご馳走になる。母の財布がペシャンコの日は、おからを脂でいためて、ソースをかけ……〉。文章の流れを読む限り猿若町の頃だろう。ここは隅田川に近く、北東に山谷堀がある。ここに川魚屋があり、メゾッコ(小さなウナギ)が売られていたことがわかる。(『私のあさくさ』(沢村貞子 平凡社 2016 P44)) みそ汁 〈甘味噌と辛味噌を適当にまぜて、すり鉢でゴリゴリすって、味噌