1999年に完成した町営住宅で住民の入居直後から奇妙な現象が起こる。 怪音が響き、皿が飛び、コンセントの抜けたドライヤーから熱風が――。 怪現象としてメディアに大きく取りあげられ、様々な憶測が飛び交い、全国からは自称霊能力者たちが競うように訪れた。 富加町幽霊マンション――そこで何があったのか。 小さな町の、大きな事件 西暦2000年秋。 驚くべき事件が新聞によって報じられた。 4億円の費用をかけて1999年に完成した四階建ての町営住宅で怪現象が起こっているのだという。 日本において、怪現象の報告は決して少なくないが、新聞やテレビと言った大手メディアで大々的に報じられたケースは多くない。この事件はその希有な例だ。 完成直後から、入居した住人たちは夜中に響く怪音に悩まされていた。 「ビシッ、バシッ」だの「キーッ」だの、メモによれば「ガラスビンが転がるような音、ノコギリで切るような音、金槌で叩