家族の愛、友人の言葉、一冊の本。死にたくなったとき、静かに手を差し伸べてくれるものはいろいろある。 寺坂さんの場合、それが「デパート」だった。 宮崎市の中心街で生まれ育った彼は、生来の内気な性格から友だちができない。幼稚園時代の遊び方は、一人で近所のデパート「宮崎山形屋」を探検するというもの。 ここでその魅力に取り憑かれ、小学生になると他県のデパートにも足を伸ばすようになる。しかし、同時に鬱々とした孤独な日々も続く。 中2で登校拒否になり、ついにすべてを投げ出したい衝動に駆られた。ふらふらと向かった先は、自殺スポットとして有名な福井の東尋坊。 崖の上でぼんやりしているとき、ふと脳裏に浮かんだのは金沢のデパート「香林坊大和」。腰を上げ、何かに導かれるようにして金沢へ。 待っていたのは、堂々たる外観、まぶしく輝く商品たち、そしてエレベーターガールの笑顔。デパートに命を救われた瞬間だった――。
![死にたくなった男を救った『胸騒ぎのデパート』 ~ここまで愛を捧げられた店舗たち:日経ビジネスオンライン](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/05f492a9ba706b05ca8fd61b1840b099fb59fdc9/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fbusiness.nikkeibp.co.jp%2Fimages%2Fn%2Fnbo%2F2011%2Fcommon%2Fnbologo_ogimage.png)