ちょうど半世紀前、復興途上の広島で、アラン・レネ監督の名作映画「ヒロシマ・モナムール(邦題=二十四時間の情事)」は撮影された。その際、主演女優のエマニュエル・リヴァさんが撮影した写真が最近見つかり、『HIROSHIMA 1958』(インスクリプト刊)にまとめられた。日常的な生活の場に分け入り、人々と向かい合った貴重なスナップとなっている。(前田恭二) 子供たちの釣り、水泳や漁業、河岸のバラック街――市街を流れる太田川沿いの光景が生き生きとよみがえる。本人も長く忘れていたが、知人に話したのが伝わり、写真家・批評家の港千尋(ちひろ)さんらがパリで確認した。総数は130~140カット。フィルムはほとんど無傷で、構図は的確だ。一瞬、「本当にこの人が撮ったのか」と港さんも疑ったほどだという。 映画撮影のため広島にやってきたフランス人女優と日本人建築家が出会い、愛情と戦時下の過去が交錯する中で、記憶と