「あの作品を書くのに葛藤はなかったんですか?」 「本当は書くのは嫌だけど、作家魂に負けて書いたのではないかと想像しているんですが」 2023年6月某日。YouTuberのKさんの生LIVEにゲストで出たときにこんな質問を受けた。20代の頃、多額の借金を返すために風俗店で働くことになった体験を書いた『エム女の手帳』(幻冬舎)のことを指しているのだと思うけど、「書くのが嫌」という気持ちなんて、自分にはこれまで1ミリも生じたことがなかったので、面食らってしまった。 あの頃は、最低最悪の底辺にいる自分の状況と、そんな自分を取り巻く日々の出来事が、あまりにおもしろすぎて、毎日毎日、腹を抱えて笑い転げていた。 「この出来事、どう書いたら、人が読んで笑うだろうか」 それしか考えられず、もはや「書かずにはいられない」状態だったのが、そのまま原稿になったというものだ。 ピュアに暴れまわる表現したさを引き留め