井奥陽子『近代美学入門』筑摩書房、2023年 ご恵投いただいたもの。いい本なので宣伝も兼ねてレビューする。 全体の感想 本当の初学者(たとえば学部一年生)でも十分に理解できる程度の易しさで書かれている。構成がわかりやすく、言葉づかいや文体もするっと読めて、それでいて重要なポイントがどこかがはっきりわかるようになっている。出てくる例もわかりやすい。 概して帯文はオーバーだったり嘘をついていたりするものだが、この本の「難しいと思っていた美学が、よくわかる」は偽りのない宣伝文句だと思う。 本書には、「読者はこういう理解をしているかもしれないけど、そうじゃなくてこうだよ」というかたちで、想定される誤読をあらかじめていねいに防いでいる箇所がけっこう多い。これはたとえば佐々木『美学への招待』などと比べたときの、本書の際立った美点のように思う。 美学(あるいは哲学全般)は、問題意識や議論の内容が初学者に