◇高野悦子「二十歳の原点」 「二十歳(はたち)の原点を旅しよう」と独り言(ご)ちていたら、文化部の同僚に聞きとがめられた。「あれはハタチではなくニジュッサイと読むのが正しい」と。 あわてて文庫版の奥付を見ると、確かに「二十歳(にじゅっさい)の原点(げんてん)」とルビが振ってある。二十歳(はたち)と思い続けてきた。ずっとずっと、30年の間。 初めて手にしたのは大学1年の時だった。仙台にある大学は、赤やら黒やら青やら、色とりどりのヘルメットが入り乱れ、ついには機動隊が入り、期末試験は中止になった。ヘルメットのアジは遠くで聞きながら、それでも機動隊の前に立った。手甲にがつんと殴られた痛さは忘れない。 〈きのう鼻を機動隊に殴られて赤くはれている。(中略)まるでピエロのようで恥ずかしい〉 彼女が在学していたころ、立命館大学は運動の渦中にあった。運動とは、恋愛とは、理想とは――。素直で純粋な心は時代
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