◇意識不明、自宅で世話 突然の腹痛「もうだめだ」 房総半島が菜の花で彩られる季節がまた巡って来た。小さな農村の一軒家で、男性(88)は毎朝元気だったころの妻の遺影に手を合わせ、かすれた声でお経をあげる。この1年間、一度も欠かしたことはない。 千葉県鴨川市。昨年3月5日夕方、男性は寝たきりで意識のない「要介護5」だった妻(当時82歳)を死なせた。衰えた手には力が入らず、妻が孫娘のために用意した着物用のひこ帯をベッドの柵に結び、妻の首に巻きつけた。 1時間後、仕事から帰った三男が息絶えた母を見つけた。「オレは長くない。先に逝ったら、ばあさんの面倒は誰がみる」とうなだれる父に、三男は声を荒らげた。「なぜ相談してくれなかった。子が親を世話するのは当たり前じゃないか」 殺人事件として捜査にあたった警察幹部は振り返る。「遺体には床ずれ一つなかった。丁寧な介護をしてきたのだろう」。事件から3カ月後、裁判