『伊那谷の老子』 北原こどもクリニック 北原文徳 あれは3月半ば頃だったか、平安堂書店の カウンター脇に風変わりなCDが置かれてい るのが目に止まった。『大いなる谷の歌 -タ オ ヒア ナウ コンサート-』と題されたその CDを手に取ってみると、即興詩:加島祥造、 ピアノ:板橋文夫、打楽器:前田祐希の3者 による、昨年の夏に駒ヶ根市中沢で催された ライヴパフォーマンスを記録したものだと書 かれていた。 信州大学、横浜国大などで現代英米文学を 研究し、フォークナーの翻訳家としても名高 い駒ヶ根市在住の詩人、加島祥造の名を恥ず かしいことに僕は全く知らなかった。ただ、 大好きなジャズピアニスト板橋文夫が参加し ていると知って、興味半分でこのCDを買う ことにしたのだった。 何の打ち合わせもなく、まったくの即興で 行われたというこのパフォーマンスは、一聴 してその見事なコラボレーションと信じられ