デュシャンの「泉」は芸術作品なのか 京都産業大学文化学部 国際文化学科 中奥 久美 はじめに ゼミでの発表を終えて、「デュシャンとの対話」ジョルジュ・シャルボニエ(北山研二 訳 みすず書房)という、対話集を読んで見てデュシャン自身の考えに触れる機会があった。本人の言葉を聞くことで、この理解しがたい芸術を理解する手助けに大いになるに違いない。マルセル・デュシャンと西洋の「美」の概念の元になっているプラトンの美の観念とを比較しつつ考えていこうと思う。 最も有名な水洗装置 マルセル・デュシャンはフランス出身の20世紀美術に大きな影響を残した芸術家である。「レディ・メイド」という既製の物体をそのまま、あるいは若干手を加えただけのものをオブジェとして提示した作品の中に「泉」という作品がある。この作品は1917年にデュシャンが匿名で展覧会に出展し、結局他の審査員の不興をかって展示はかなわなかった。