大学院時代の話である。私ははじめて「研究」で悩んだ。 1968年に大学を卒業したあと、コンピュータに「目」を持たせることに私はロマンを感じていた。コンピュータビジョンである。そこで、当時その分野で最も先進的な研究をしていた京都大学工学部の坂井利之先生の研究室に入った。助教授が、その後、京大総長になった長尾真先生である。 こう言ってはなんだが、私は「いわゆる成績優秀」なタイプだった。小学校から高校、大学の学部まで「正解を出す試験」は得意中の得意だった。どの教科も100点を取る気分でゲーム感覚を楽しんでいた。一方、人は自分のことを「良くできる奴だ」と思っている、という変なコンプレックスもあった。 大学院博士課程に入ると、早く格好良い成果を上げなければというプレッシャーを感じ始めていた。数学的でちょっと格好良さそうな論文を読むと、これでよいことが出来そうな気になってそれに取りかかる。すぐに行きづ