小説『天地人』の最初の方に、「方法論」という言葉が出てくる。もはや時代が変わり、信長のような新しい戦いの方法論を考えなければならない、という文脈である。しかし、これは「方法」だけでいいのである。あと続けて読んだら「命題」をもろに誤用していた。 だが学者でも「方法論」を「方法」の意味で使う人は多い。「方法論」というのは、方法に関する議論のことである。「方法」だけでは、普通の言葉過ぎると思うのだろう。これと似た関係にあるのが「美」と「美学」で、「美学が感じられる」という時、実際は「美」でしかなかったりする。 - 『新ゴー宣』で、天皇を本気で神だと信じていたのは、大東亜戦争時分に子供だった「小国民世代」だけだと書いてあった。これは興味深い指摘だ。同じように、明治43年までの日本人は、それほど天皇を崇拝すべき、畏怖すべき存在だとは思っていなかったのである。 ところがここに面白い事例がある。1929