子どものころから活字中毒だった。森鴎外のきれいな擬古文に魅了され、芥川龍之介の独特な世界観に浸った。読書は今でも欠かせない習慣で年に70―80冊は読む。知的好奇心の追求とともに、生き方の指針となっている。一つのテーマでさまざまな主張の本を読むことを意識している。対立した論理の中に思わぬ共通点があるからだ。 個人の生き方をテーマにした書籍では新渡戸稲造の『武士道』と、ウエイン・W・ダイアーの『自分のための人生』に影響を受けた。『武士道』は日本人が育んできた道徳観や正義感の源泉となっている。外国人が切腹を見学する場面がある。名誉ある死を成し遂げるために、いかに自分を抑制するか。極端過ぎて今の時代には到底合わないが、日本人が本質的に持っている「公」を大事にする心がある。まさに自己抑制の世界だ。 対立軸にあるのが『自分のための人生』だ。この本は『武士道』の自己抑制とは対照的に、個人の解放を説いてい