別の部署から顔見知りの同僚がやってきて、はちにいぜろの件で、と言った。後ろの席の後輩が立ち上がって、ヤマザキさんですねとこたえ、出ていった。 午後を少し回ってから給湯室に立ち寄って昼食を温めていると、後輩が通りかかって、マキノさんこれからですかあ、私も食べます、と言う。食後にコーヒーを淹れ、私たちは少しのあいだ黙ってそれをたのしんだ。たっぷりしたマグカップの中身が三分の二ばかり減ったころ、ヤマザキさん、と私は言った。ええヤマザキさんの件で打ち合わせしました、と後輩は言った。 ヤマザキさんはこの会社の関係者で、たびたび苦情を申し立てる人だった。担当部署では対応しきれず、とうとう関連部署から何人かが集まって対策会議をひらいたらしかった。 えらいねと私が言うと彼女は首をかしげて訊く。業務内容からして私がミーティングに出るの当たり前じゃないですか。そうじゃなくて、ヤマザキさんて呼ぶから、と私は言う