山梨日日新聞 2008年12月12日掲載 がんと闘った宇留野にエール 「おれ、がんだったんだ」。今季限りでVF甲府を退団する宇留野純が語ったとき、最初は何を言っているのか分からなかった。 ホンダFC時代の2005年、初冬。顔の皮膚が荒れ、睾丸(こうがん)に異常を感じた。精巣腫瘍(しゅよう)。当時25歳のミッドフィルダーの体は、10万人に1人といわれる病に侵されていた。 すぐさま手術。術後は転移の危険性と向き合う闘いが始まった。医師から勧められたのは抗がん剤による治療。転移の可能性は減るが、体に大きな負担がかかるため、サッカーをあきらめなければならない。二つの選択に宇留野は悩んだ。 「サッカーを捨てることはできなかった」。病院を転々とし、都内の病院に通いながら抗がん剤以外の治療を受ける道を選んだ。月に2、3度と都内へ足を運んで検査を受けた。病室で結果を待っているときの恐怖は、今も忘れる