1995年秋、松下電器産業(現・パナソニック)相談役(当時)の谷井昭雄は、たまたま視察に訪れた香港の運送会社の倉庫をのぞいて驚いた。7年間務めた松下の社長を退いて2年余り、経営は後任社長の森下洋一に完全に任せていたが、時折、頼まれて業務の一端を引き受けることがあった。 この時もそうだったが、何の変哲もない物流倉庫の2階で目にしたのは、電子機器を流れ作業で整然と組み立てる運送会社従業員たちの姿だった。メーカーから部品や、数点の部品を組み合わせたモジュールなどの供給を受けて、最終の組み立て加工を運送会社が行い、そのまま輸送するのである。 電機メーカーの工場と見まがうばかりの光景に谷井は息をのんだ。「えらいこっちゃ」。 デジタルとネットが経営を変えた 戦後70年。日本経済は、焦土の中から奇跡の復活を遂げた。終戦から10年と経たずに始まった高度成長期(1954~73年)には、途中2年間を除いて実質