作家はその作品を通じて、自分を発見し、自分を実現する。作品以前において、作家は自分が誰であるかを知らないし、現に何ものでもない。作家は作品を始点にして存在し始める。 ------モーリス・ブランショ 難しいことをやさしく やさしいことを 深く 深いことを 愉快に 愉快なことを まじめに 書くこと ------井上ひさし 書く前は細心に、書き出せば大胆に。 文章は感受性人間の慰安にあらず。 ------村田喜代子 「昔から作家になりたいと思っていたの?」とキリエ【淳平の恋人】が質問した。 「そうだね。というか、ほかの何かになりたいと思ったことがなかった。ほかの選択肢を思いつけなかった」 「要するに夢がかなったんだ」 「どうだろう。僕は優れた作家になりたいと思っていたんだよ」、淳平は両手を広げて、30センチほどの空間を作った。「その間にはかなりの距離があるような気がする」