はじめに 日本人類学会では近年、研究者および教育関係者を中心とした『教育小委員会』を立ち上げ、『理科離れ』などの初等中等教育における問題を議論してきました。その中で、教育現場で自然人類学の知見を活用すれば、理科への興味を喚起できるという見解に至りました。すなわち、もっとも身近な生物である私たち自身『ヒト』を題材として生物を学習することが必要だと考えています。 今回提示された新しい高等学校学習指導要領の「生物」では、生物の諸現象を理解するための説明原理となる進化について、従来よりも幅広く取り上げるように改正された点を高く評価しております。教科書では、「ヒトの生物学」としての視点から、ヒトの特異性と、他の生物との連続性が扱われることにより、生徒たちに生物界を明確に理解させることができると思われます。 ヒトは直立二足歩行や大きな脳といった特徴をもちますが、他の生物と共通性をもつ生物の1種であ