2002年10月 別添 10/14 /神林長平[プリズム]/ *全体感想および神林論* 神林を読みなれるとすぐに分かることだが、彼の作品のテーマの大枠はいつも同じで、「認識とはなにか、存在とは、自己とは」だ。本作品では、《他己から認知されない》存在を重ねることで、最後に知己を得る仕掛けになっている。 関連短編集の形をとっているが、その関連のために用意されたギミック(《界》の3層構造、《色の神》など)は、実際にはただの味付けに過ぎない。物語を1作に体系だてているのは、この味付けのほうではなくて、あくまでも《他己から認知されない》軸のほうだ。だからこそ、最終話の結論部分には、このギミックは裏方としてしか登場しないうえに、ギミックのほうの物語は解決しない。神林を読みなれていないと、最終結末で違和感を感じるかもしれない。 --とはいえ、この味付けが無性に心地よいのだ。そのことは個々に触れたい。 本