世界一薄くて軽いという服地で、パリ、ミラノのファッション市場にふわりと舞い降りた織物会社がある。能登半島に本社を置く天池合繊だ。 「天女の羽衣」と名付けた布は重さが1m2当たりわずか10g。肌触りが絹のように滑らかで、表面は水面が波打つかのような光沢がある。 製造には直径が毛髪の約5分の1という超極細糸を使う。同社によると、それほど細い糸を織れる業者は世界でも数社。染色まで手掛けて衣料分野で展開しているのは同社だけだという。 それだけに注目度は高く、2005年の発売以来、国内外の展示会で同社のブースを訪れた企業は約300社に上る。世界の最新ファッションを伝える雑誌にはこの布を使った有名ブランドの服が頻繁に登場する。イタリアのジョルジオ・アルマーニなどだ。 だが社長の天池源受は雑誌を前に少し複雑な表情だ。「商社さんを経由する分は、『ブランドの名前は出さないで』って、言われとるんです。出すと、