2015年の日清食品社長への就任時から、「Beyond Instant Foods」をスローガンに掲げている安藤徳隆社長。「カップヌードル」などの既存事業とは別軸で、「もう一つの日清をつくる」と急ピッチで進める新事業が、21年に発表した「完全栄養食プロジェクト」だ。多くの大企業がイノベーションのジレンマに陥る中で、なぜ日清食品は抜け出せたのか。 日清食品が進める「完全栄養食」は、日本人の食事摂取基準で設定された33種類の栄養素をバランス良くすべて摂取できるよう設計された食事だ。1食当たりのカロリーを500キロカロリーほどに抑えながら、しっかりおいしい。ガッツリ系のカツ丼やナポリタン、ビーフカレーなど、皆が好んで食べる普段のメニューを次々と完全栄養化している。約4週間で約40食を完全栄養食に置き換えた臨床試験では、参加者の80%以上で体重や内臓脂肪面積が減少するなど、変化が見られたという。