東日本大震災で地震、津波に加え、東京電力福島第1原発事故に向きあう福島県の太平洋側の地域。市内の大半が原発から30キロ圏内で避難指示と屋内退避の対象となっている南相馬市では、命を支える医療にも影を落とす。物流が滞りがちで医薬品の供給もままならない状況が続く。放射性物質という「見えない敵」との戦いが長期化するなか、現地の医療の実情を取材した。兵糧攻め 屋内退避圏にある原町中央産婦人科医院の高橋亨平院長(72)は「(3月15日の)屋内退避指示をきっかけに南相馬は真空地帯になり、物資が一切入らなくなった。医薬品も食料もガソリンも、生活物資も、何もかも」と話した。 市内の医療機関は混乱し、入院患者への食事を1日1~2食にしてしのぐ病院もあった。治療もままならず、必要な薬や血液などを入手できずに患者が亡くなったケースもあった。 「入院患者を退避させるなど安全確保もできないうちに、政府の一言が物流を止