国際子ども図書館では2004年から、全国の各種図書館等で児童サービスに従事する図書館員の資質向上、幅広い知識の涵養に資することを目的に、国際子ども図書館が広く収集してきた内外の児童書及び関連書を活用した児童文学連続講座を実施しています。 その第一回である「ファンタジーの誕生と発展」(2004年10月18日-20日開催)の講義録を公開いたします。
夏目漱石 吾輩は毒虫である。名はザムザという。なんでこうなったのか頓と見当がつかぬ。何かしら不安な夢を見ていた気がするが、夢とは動物の体をかくも変化せしめる程のエネルギーを持っていたかしらん。腹にうじゃうじゃついている足が気色悪いのだがそれを舐める舌もない。あれほど好きな毛繕いももう出来ぬのだろうか。今の現実こそこれ悪夢である。主人が吾輩を見れば何と言うだろうか、「ごろごろ虫みたいに寝転がってるから、本当に虫になりおった」主人が吾輩の姿を見る時は吾輩が家で休息しておる時か、珍しく躁鬱の気が消え落ちついて外界を見ることが出来るようになった時である。したがって吾輩の外での勇猛果敢なる活躍や、疳の虫が爆発した主人の目に止まらぬよう家を駈け回る敏捷な姿を主人は目にしていないのである。いつもごろごろなどとは腹立たしい。最もまだそう言うと決まったわけではないのだが。あの主人なら巨大な毒虫がかつての愛猫
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