名古屋大病院(名古屋市)は11日、泌尿器科と小児科が昨年、国の承認を得ずに幹細胞を使った治療を患者11人に実施していたと発表した。治療は臨床研究に該当するため、厚生労働省の指針に違反するという。 発表論文を取り下げるなどしたが、指針に罰則はない上、治療による直接の有害事象はなかったとしている。関係者は処分しない方針。記者会見した松尾清一病院長は「病院組織そのものに不備があった」と謝罪した。 幹細胞は、傷ついた臓器や組織を治療する再生医療に役立つと期待されるが、効果や副作用が十分解明されていないため臨床研究には慎重さが求められており、2006年施行の指針は厚労省の審査が必要とした。 名大病院は、技術が未確立の治療法だと事前に患者らに伝え了承を得ていたが、生命倫理に詳しい東京財団の■(■は木ヘンに勝の旧字体)島(ぬでしま)次郎研究員は「患者のための指針との認識が甘かったことが一番の問題だ」と指