16年間J1の名門クラブを支え、日本代表でも活躍してきた男が、昨年11月、唐突に解雇を告げられた。失意を乗り越え、新たな戦いの場に選んだのはJFL。うっすらと雪化粧のほどこされた信州の山々を背に、偽らざる胸の内を赤裸々に語った。 お好み焼きをつついていると、おもむろに携帯電話が震えた。画面を見ると、松田直樹とある。数時間前、G大阪戦があった万博の競技場で別れたばかりだった。連敗を脱し、久しぶりに明るさを取り戻した松田の顔が浮かぶ。今は午後8時過ぎ。気分良く夕飯にでも繰り出しているはずの時間帯だ。何の用だろう。着信ボタンを押すと、何の前置きもなく、彼は言った。 「切られた」 電話口に恐ろしく無機質な声が響く。一瞬、意味を判別できないでいると、言葉が続いた。 「戦力外。さっき、会社から言われた」 2010年11月27日、それはあまりにも突然の通告だった。 それ以降、しばしの間、本人の記憶は混沌