秋だ。暑い暑いと言っていて、台風が来て、それが幾つか通り過ぎたら、もう秋だ。 空が夏と違う。雲も違う。空気も、風の肌触りも違う。 季節のはっきりした国だ。 俳句に「季語」なんて言葉があるくらいだ。「歳時記」なんて書物があるのだ。 春夏秋冬。4つが毎年移り変わっていく。 季節には始まりも終わりもない。いつも途中だ。 以前、自宅の近くに誰でも走ることのできる400mトラックがあった。 体力が落ちてきたなぁ、と感じた頃、ここをよく走った。 ただ走ると飽きるので、1周を4つに分けた。最初の直線100mは、夏。カーブに差し掛かったところから秋だ。次の直線が冬。最後のカーブが春で、また直線部分の夏が来る。 走っている時は、その部分の季節を思い浮かべる。 「ああ、夏だ、暑いなあ、プールへ行こう。でももうすぐ秋だ。さあ秋だ。紅葉が濃くなっていくぞ。枯葉がそろそろ散って、冬だ。寒い冬。木枯らしが寒い。雪も降