美術の基礎問題 連載第13回 村田 真 .. 1.美術館について .. (5)美術館建築――2 ホワイトキューブ 美術館や画廊の展示空間は、とりわけ近現代美術を扱う施設のそれは、直線に囲まれた真っ白いニュートラルな壁の「ホワイトキューブ」が理想とされる。外観はいかめしい神殿型であろうと、モダンな四角い箱型であろうと、あるいは既存の建物を再利用した倉庫型であろうと、内部は「ホワイトキューブ」で統一されていることが多い。そして、その白い壁面に、隣り合う作品が視野に入らない程度の距離を保って作品をディスプレイするのが望ましいとされる。つまり、作品を「図」として映えさせるためには、その周囲には一定量のなにもない「地」の空間が必要だというわけだ。 しかし、ホワイトキューブが理想的な展示空間とされるようになったのは、そんなに古い話ではない。1929年に開館したMoMAがホワイトキューブを採用してからの