昭和60年8月12日、小学4年生だった俺は生まれて初めて飛行機に乗って東京へ行った。埼玉に住む叔父の家に着き、テレビを見ていると、飛行機が墜落したという臨時ニュースがあった。その直後に、俺が無事かどうか親戚中から叔父の家に電話がかかってきた。冷静に考えれば、行き先がまったく違う飛行機だから大丈夫に決まっているのだが、今になってみると親族の心配もよく分かる。 亡くなった方は520名、ご遺族は数千名にのぼる。当時の俺と同じ10歳の男の子が乗っていたというニュースが数年前にあっていた。俺と一緒で初めての一人旅行、甲子園を見に行く途中だったそうだ。俺が羽田に着いて数時間後に、墜落した日航機は離陸している。もしかしたら、空港で彼とすれ違ったのかもしれない。小学4年生のリュックを背負った自分の姿と重ねて、哀しさとも切なさとも言えないような感情が胸に湧く。 今回読んだ本は、遺体の身元確認作業で責任者だっ