石原の勤める東経食品は、創業45年、従業員およそ200名の中堅食品メーカーだ。創業者橘庄之助が開発した秘伝のタレがベストセラーとなったことを契機に、調味料のメーカーとしての認知が拡大。右肩上がりに業績を伸ばし、現在では東京本社の他に、埼玉県に2つ工場を所有するまでに成長を遂げた。 今年39歳。石原が東経食品の門を叩いたのは約半年前。以前勤めた商社での営業実績も評価され、「営業マネージャー」として転職した。「自分の好きな商品を世の中に発信する仕事がしたい!」石原は燃えていた。 ・・・ところが、石原が目にした現実は、予想とは違っていた。 ここ数年、東経食品の売上の伸びは鈍化していた。新しい商品の開発が遅れ、競合メーカーの新製品に徐々にシェアを奪われつつあった。東経食品は、今、新しい提案力が求められていた。 石原が最も驚いたのは、旧態依然とした営業方法だった。営業マンの力量に頼り切ったスタイルは