駅前にロータリーがあると、知らない町だ、と感じてしまうのは、私が幼い頃からずっと駅と住宅街が地続きに直結しているような町に住んでいるからで、あたりを見回しながら、ここもまた知らない町だ、とすこし身構えつつも、あちこちで交わされる、あら、いま帰り?、どーも、そうなのよぅ、なんて、他愛もない挨拶、のようなものに体半分、溶けだすような気分で入った店の、背後の席では知らない人が、私の知らない恋の話をしていた。酔いが回っているわけではないみたい、だけどその語り口には、思っていることを口に出す気持ちの良さみたいなものが感じられて、私もつい、うれしくなって、何かを言おうと口を開くのだけど、その前に、と、つい酒が進み、ぼんやり、酔ったなぁとか思いながら、行儀悪く耳をすます。状況はよくわからなかったけれど、たぶんうまくいっている、とか、そういう感じの平和な話で、ふと、 → 「いますごく幸せなんだよね」という