魚には骨がある。喫茶店での打ち合わせを終えて前を走る細い路に出た。陽射しで視界が真っ白になったその瞬間に、部長は言った。魚には骨があるという言葉を知っているか、と。 人の言うことを正確に把握するのはとても難しい。完全にわかりあうことは恐らく不可能だ。発信する側、受信する側、双方にそれぞれの問題があるから。僕らは経験や知識を駆使して相手の言わんとすることを探し当てる。手探りだ。会議やプレゼンで使用されるレーザーポインタを用いてピンポイントで対象を指し示す難しさに似ていると思う。先ず標的の周辺部を照らし、それから目標にじりじりと近づいていく。そういう感覚。 今回のプレゼンは先方の要請でパワーポイントを使用することになった。僕の役割はパソコンとファミコンの区別が出来ているのかさえ怪しい部長のサポート。プレゼンテーションの一切は部長が行うことになっている。そのための打ち合わせだった。 知りません、