その日、僕の住む街は夏日だった。気温が高くなって夏の気配が空気を充たしだすと、理由はよくわからないのだけれど決まって僕の気分は沈んでしまう。夏が来るたびに沈んでしまうんだ。 僕は沈んでいた。仕事や将来についていろいろと考えて。キーボードをカタカタと叩いていると、なんだかその音に吸い込まれて自分自身がなくなってしまいそうな、そんな感じがした。僕のやりたい仕事って何だっけ?とか考えていると、沈むってもの。 夕刻、そんな僕の異変に気付くとはとても思えない上司から飲みに誘われた。僕の口数が少ないと飲みニケーションで解決しようとするのが彼のお決まりのパターン。断る気力もなかったので30分後にはいつもの居酒屋で形だけの乾杯をしていた。乾杯?何に対して?と卑屈な目で眺めながら。 いつものように、上司の話は適当に相槌を打ちながら流した。今日の板わさは桃色の部分がないんだね、どうしてだろう?とかつまらないこ