「あのチェーンが周辺にできて以来、フリーの客がまったく寄りつかない。ひどいときは客足が3割近く落ち込んだ」 ジャーナリスト 中島みなみ=文 小原孝博=撮影 ライヴ・アート=図版作成 残暑が続く某日の午後6時過ぎ、東京・浜松町。 居酒屋ビルの前で通行人にチラシを配布しているスタッフが、呼び込みをしている同僚と、こんな話をしていた。 「今日、やばいね」 「うん、やばい」 名刺サイズのビラを受け取ると、そこには「飲食代10%OFF」と印刷された文字に、サインペンで×印が書き込まれ、余白に「50%OFF」と書かれている。何が「やばい」のか。聞いてみると、メニューの大半を半額にしても「客が入らない」と、言う。 外食産業総合調査研究センター推計によると、居酒屋・ビアホールの市場規模は前年比3.9%減の1兆87億円。ピーク時の1992年の1兆4692億円の3分の2だ。減少する客を奪い合い競争は激化。居