観る者の郷愁を誘う古代遺跡、戦争や災害による破局の光景、時間の経過とともに風化し、朽ちていく物質の姿、そして自己の境界が溶け出すような感覚に怯える人間の有り様。これら「崩壊するもの」のイメージは、20世紀以降の美術の底に絶えず流れていたといえます。 言うまでもなく、その背景には「戦争の世紀」と呼ばれる20世紀に、人類が引き起した幾多の災厄があります。その夥しい瓦礫の山は、もはや失われた過去を夢想させるロマンチックな「廃墟」ではありえません。それはトラウマのように常に現在形で私たちの生を呪縛してくるのです。また80年代、バブル経済の繁栄に酔いしれていた日本に起こった「廃墟ブーム」もこの文脈で考察すべき現象でしょう。大規模な再開発によって次々と古い建物が解体されていったこの時期、都市に出現した束の間の建築の死が、世紀末の終末論的ヴィジョンと重ね合わせられて、妖しい魅力を放っていました。 これだ
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