「酸処理」をしないで海苔を作るのは至難の技 目の前にある「無酸処理のり」からは、磯の香りがした。 「この匂いが海苔をやっている醍醐味ですね」と、北見の食品問屋ヤマムロの2代目社長、山室正則さんはいう。海苔の香りが漂う工場併設の家で育った。長じてからは先代である父親と一緒に海苔の入札で日本各地を回り「この味どうだ」と、常に父から試された。その積み重ねで、おいしい海苔の味を体に染み込ませていった。 そんな山室さんが「入札に行っても面白くない」と感じ出したのは、今から10年ほど前のことである。兵庫、徳島、香川…それぞれの浜ごとに海苔の“顔”があったのに、みんな金太郎飴のようになってしまった。 その理由は、「酸処理」にあった。海苔の養殖を農業に例えるならば、それはさしずめ農薬にあたる。海苔を網ごと酸性の液に浸し、再び海に戻す方法だ。アオサなど他の海草や病原体を死滅させる効果が高く、ほとんどの市販