今回は、千葉県の房総半島にありながら、部屋から海も見えず、銀行に事実上、見放されてしまうほど厳しい経営だった民宿が、地道なサービス改革で復活を果たした事例をご紹介したい。 その旅館は千葉県南房総市にある「網元の宿 ろくや」という。 ろくやのすぐそばには、夏になると首都圏から多くの海水浴客が訪れ、臨海学校も数多く行われる岩井海岸がある。この場所で、ろくやの現在の社長である渡邉丈宏氏の祖父は定置網の網元をしていた。さらに、海砂利を運搬する海運業も営み、船3隻を所有していた。 1950年代に入り、観光ブームが房総半島にも訪れると、渡邉社長の父親が自宅の一部を使い、副業として夏の間だけ民宿「下隠居」を開くようになった。 渡邉社長は「夏は物置で暮らしていた」と当時を振り返る。 下隠居はかつてどこにでもあった民宿と同じように、風呂やトイレは家族と共同で使い、襖一枚で仕切られた部屋に海水浴客が宿泊してい