File.109 そのときチャーハンは選ばれた 男の価値は切り捨ててきたものの数で決まる――。 昔、そういう名言を残した王がいた。人生とは取捨選択の積み重ねであり、切り捨ててきたものが多ければ拾い集めたものも多いというわけだ。人は誰でも、たった一つの生き方しかできない。この生き方も良いが、あの生き方も悪くない――。そんな生き方はできない。人は日々くりかえされる無限の選択肢の中からそのときの自分に最も見合う選択をし、それ以外のすべてを切り捨てながら生きなければならない。望む望まざるにかかわらず、およそすべての人間はこの選択を無意識のうちに、あるいは意識的にくりかえしている。場合によっては、たった一つの取捨選択がその後の人生を一変させたり、瞬間的に人生の幕を下ろしてしまうこともある。 その日もまた、私は重大な人生の岐路に立たされていた。 道は二つ。どちらか一方を切り捨て、もう一方の道を