昨年10月、筑波大付属視覚特別支援学校(東京都文京区)の生物室では、43年目となる恒例の授業が始まろうとしていた。 「今日から本物の骨を触ります」 2時間続きの授業の冒頭、中学1年A組の生徒7人に、生物を担当する武井洋子先生(56)が語りかけた。このクラスは全員、点字を使って授業をする全盲の生徒だ。「えっ、まじで!」と一様に驚く生徒たち。毎年くり返されるおなじみの光景だという。武井先生は続けた。「私たち(盲学校)の文化では、触らないと見たことにならないからね」 生物室は4人で使える大きめの机2個と教壇があり、一般の学校の理科室をコンパクトにしたような造りだ。後方にあるロッカーには模型や標本、分厚い図鑑などの資料がびっしりと入っており、雑然とした感じが、どこか懐かしい。私が通った中学の理科室との違いといえば、黒板やホワイトボードがないことくらいだろうか。