[第7回]『グスコーブドリの伝記』ブドリの妹捜しがこんなに幻想的なわけ 「では問題に答えなさい。工場の煙突から出るけむりには、どういう色の種類があるか。」 ブドリは思わず大声に答えました。 「黒、褐かつ、黄、灰、白、無色。それからこれらの混合です。」 これは宮沢賢治の『グスコーブドリの伝記』の一節。独学で勉強してきたブドリが、学校でクーボー博士の口頭試問を受ける場面だ。シンプルな質問から始まるブドリの一連の答えは、非常に丁寧なもので、彼が科学者の観察眼を持っていることを巧みに表現している。この科学的な観察眼の存在こそが、『グスコーブドリの伝記』を童話であり、かつ科学小説として成立しているポイントだ。 だが、映画『グスコーブドリの伝記』はこの口頭試問の会話を省いた。観察をベースとした科学的感覚の欠落こそ、映画『グスコーブドリの伝記』を特徴づける重要な点だ。 映画『グスコーブドリの伝記』のあら