今から12年前、半年ほどカフェで修行をしたことがある。 同棲中の彼は大学院をやめ、カメラマンで生計を立てていた。いつかは自分で会社を起こしたい、という目標を立てての準備期間だった。 まだ起業の見通しは立っておらず、彼はあけてもくれても撮影のために早朝に家を出て深夜に帰る多忙な日々を送っていた。私は彼の生活を家事で支えながら、主婦ともフリーターともつかない身分で毎日を過ごしていた。それまでやっていたライターとMC(司会)の仕事は、同棲生活と両立させるにはハードだったために休業していた。 そんななか、カフェを開業することを思い立った。自分で店をするなら、マイペースでできるだろうともくろんだからだ。今となっては甘い考えそのものだが、当時はコーヒーとケーキ作りにのめりこんでいたので、本当にそう思ったのだ。 そこで、北大路通りにあるブラジルのバール風カフェで修行をさせてもらうことにした。「いつかカフ