日本屈指の規模を誇る戸田葬祭場。中央左に火葬炉の15本の煙突が見える。炉は無煙化されている。手前はペット用の火葬炉 その施設は、高速道路沿いの林道を分け入った場所にあった。 玄関へと歩みを進めると、観音扉が自動で開いた。荘厳なエントランスホールから、白大理石に囲まれたロビーへと誘われる。革のソファに座ったカップルが、沈黙したまま、俯いて動かない。冷たく、重い空気が辺りを包み込んでいる。 初蝉が鳴き始めた2016年7月某日。筆者が訪れたのは、神奈川県横浜市金沢区にある火葬場、南部斎場である。午後3時過ぎ、1日の最終の会葬者が「最後のお別れ」を終え、骨上げ(拾骨)を待っているところだった。 首都圏で増える「直葬」 ロビーで見たカップルは、近年首都圏で増えている直葬の会葬者だと推測できる。直葬とは、葬式をせずに、火葬だけで済ませてしまう葬送のことだ。直葬の場合、最小限の親族だけが火葬場を訪れ、骨