「少子化は意識や文化の問題」とする人がいるのだが、ありていに言えば、カネの問題だ。経済より、意識や文化はゆっくり変化するものなので、意識や文化の遅れが原因に見えてしまう。原因は、経済に発する。意識や文化を経済に適応させるのも大切だが、それに力を入れていると、根本にある経済の解決に行き着かなくなってしまう。世の中、カネで解決のつくことは多い。少なくとも、意識や文化を変えるよりは容易だ。まあ、こんな露悪的なことを言うから、嫌われるのだが。 ……… 前田正子先生の新著『無子高齢化』は、少子化の原因に若者の困窮があることを強く指摘していて、共感できる内容だった。むろん、少子化には複合的な要因があるのだが、政策的に解決すべき対象を特定することは、極めて重要だ。「それは十分条件でない」と批判するより、主な必要条件を順につぶしていくべきだ。学術的な真実の追求とは異なり、極端に言えば、若者の困窮にテコ入れ